私たちの家族として暮らす犬は、とても身近な存在ですが、どれほど慣れていても、人間とは“ちがう種の動物”です。
咬む、追う(狩る)、噛む(齧る)、吠える、守る・・・
犬と暮らすうえで起こるトラブルは、犬が持っている動物としての本能に原因がありますが、 それに対して人が誤った対応をしてしまったために、ますます問題を悪化させていることがほとんどです。
――犬がどんな習性を持つ動物なのか、また、人はどんな対応をすればいいのか。
飼い主さんご自身が理解して、犬をコントロールできることが大切です。 預けてトレーニングしてもらっても、飼い主さんが同じように対応できなければ、犬が従うとは限りません。 1日24時間、1年365日、10年あまり・・・長い時間をともに暮らす相手なのだから、犬を理解して、より良い関係を築きましょう。
犬のしつけは、そんなに難しくはありません。犬の性質やしつけの方法をきちんと理解して、根気よく実行すれば、どなたにでもできます。
「いけない!」と叱る前に、犬の行動を予測して“困った行動”を防ぐための管理をすれば、 叱る必要性そのものが、ぐっと少なくなります。
また、叱ることでは“何をしたらいいのか”、犬に適切な行動を教えることはできません。 犬は、単語なら覚えますが、人の言葉や理屈は理解できません。 犬がまるで人の言葉や気持ちをすべて理解しているかのように見えるのは、犬の優れた状況判断力のせいなのです。
犬のしつけとは、犬にわかる方法でコミュニケーションをとり、 犬の行動をコントロールすることができるようになること。 たぶん、わかってるだろう・・・ではなく、確実に犬に通じる“共通語”をトレーニングで作ることです。
群で暮らす習性を持つ犬は、仲間と意思を伝え合うため、高いコミュニケーション能力を発達させてきました。 犬はコミュニケーションの達人であり、また、コミュニケーションを必要とする生き物です。 犬は、人とのコミュニケーションを強く、強く求めています。
ですから、犬にわかる方法で教えてあげれば、犬種や年齢にかかわらず、 どの犬も、驚くほどたくさんのことを覚えてくれます。 要は、飼い主がその方法を知っているか、知らないか。 ――犬がどんな犬になるかは、たいていの場合、“犬のせい”ではなくて、“飼い主しだい”なのです。
犬をしつけるためには、まず犬を理解することが必要ですが、ご自分でしつけをすることで、 さらに犬への理解が深まり、犬との絆も強くなります。
犬は、その愛らしい姿や仕草で、人を和ませたり楽しませたりしてくれますが、人が犬を飼う本当の喜びは、 見た目の愛らしさ以上に、お互いの意思が通じ合う瞬間にあります。
犬とぴたりと呼吸が合う瞬間。私たちの働きかけに、犬が目を輝かせ、耳を傾け、全身で応えてくれる瞬間。 ――それこそが、犬を飼う醍醐味。自分で犬のしつけ(トレーニング)をした人だけが味わえる、犬からの最高の贈り物なのです。
ほめながら、人も犬も楽しんでしつけをすることで、お互いの関係が良くなるばかりか、犬が心から人を信頼し、精神的にも安定します。
穏やかで、人が大好きな犬に育てましょう。